雲石峠の旧道

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日本で唯一、太平洋と日本海にどちらも面している市町村が北海道にあるのをご存じでしょうか?その地とはズバリ道南の八雲町。以前は日本海側の熊石町、太平洋側の八雲町の2町に分かれていましたが、2005(平成17)年に平成の大合併で新たな八雲町となったことで両方の海に面することとなり、日本で唯一の名誉を手にしました。しかし当然分水嶺はあるわけで、旧八雲・旧熊石の両地域を行き来するには峠を越えねばなりません。両地域から1字をとって「雲石峠」と呼ばれるこの峠は海抜430m弱。道中ほとんど全線が森林の中を行き、サミット前後は旧カープと急坂が連続する難所です。前回に続き北海道 トンネルwiki用の写真を撮りに今回は雲石峠の3つのトンネル周りをウロウロしてきました。そしてせっかくだから旧道もウロウロしちゃうじゃん?


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まずトンネル1つ目。峠から八雲寄りにあるピリカベツトンネル。ピリカベツとは鉛川上流にある支流の古い名前で、地形図からその名前はすでに消えています。明治時代の仮製版地形図によると国道277号清流橋の架かる川の様ですが、国有林の基本図を見たら1本上流の枝沢にピリカベツ沢の表記がありました。どっちがほんとなんでしょ。ピリカベツトンネルはどちらの川からもちょっと距離を置き、鉛川本流の蛇行を回避する様に掘り抜かれています。鉛川というのは鉛鉱山が流域にあったから出た名前で、アイヌ語ではパンケルペペ(訳:下の峠道の川)と呼ばれていました。日本海と太平洋を結ぶ最短の峠道としてアイヌは古くからここを道として利用していたみたいですね。


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ピリカベツトンネルの西側にちょうどパーキングがあったのでここから出発。早速トンネルに行こうと思ったけどやっぱり左の旧道が気になるので軽く入ってみます。


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旧道はアスファルトが引っぺがされておらず存外藪漕ぎのない出だしとなりました。


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薄れてるけどセンターラインも見て取れます。


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道路の中央は舗装が残っていてもさすがに路肩や路外まできれいとはいかず藪や灌木に視界を遮られていましたが、一瞬晴れた視界からはすっかり夏っぽくなった山の景色が見えました。流れる川が鉛川、奥にそびえる特徴的な山は雄鉾岳という山だそうです。


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鉛川が鋭くカーブするその外側では護岸の擁壁が崩れ、ギリギリに作られた旧道が半分ほどえぐり取られていました。


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その先今度は川のカーブの内側に差し掛かるとご覧の通りの繁茂。トンネル撮りに来たのにまだ1枚も撮れてないのでさっさと戻ります。


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というわけでようやく撮りました。本日1枚目のピリカベツトンネルです。詳細は北海道 トンネルwikiを見てね。


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ピリカベツトンネルの東側。


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トンネル前に架かる橋の下に降りて旧道に入ってみます。


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こちらも舗装が程よく残っていて天気もいいしお散歩にはちょうどいいですね。


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川がきれいですね。右の方は崖が迫っていて非常にわずかな敷地を危険を冒して道路が通っているのがわかります。ピリカベツトンネル含め鉛川道路2.2kmの整備にはこのような危険個所の回避が大きな理由になっています。トンネル開通時には大雨で土砂災害の危険が差し迫ったため供用を緊急的に1日早めたほどです。


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河岸の道路はずーっと石垣の上に続きます。写真の中間には枝沢に架かる小さな橋が見えてきました。


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しかし道路はそこに至るまで続きませんでした。なので現道に戻って次のトンネルへと向かいます。


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雲石峠をはさんで日本海側の熊石側にはトンネルが2つ。峠の中ほどに見市トンネル、上の方には雲石トンネルがあります。雲石峠に自動車が通るようになったのは。この頃雲石峠周りにはトンネルは一切ありませんでした。雲石峠が産業開発道路に指定されて改良が進められて初めてのトンネルとして雲石トンネルが建設されました。平成になって急カーブが連続し落石などが発生していた箇所を一新し見市トンネルが開通しました。この付け替えでは多くを川の対岸に移したためなかなか旧道の様子を覗き知ることは難しくなっています。


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峠の熊石側のふもとにある見市温泉付近から自転車で走りだし、現道のトンネルを撮りつつ峠を登り、帰りは見市トンネルの旧道を下ってきます。天気良すぎて暑いです。登りが地獄。


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峠のちょうど2合目から上は舗装が新しいと思ったらここから付け替えの区間です。見にくいけど右に旧道が分岐しています。今は現道の方を登ります。


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新道になって楽で安全になったとはいえ、目指すサミットの標高はおんなじわけで登りきついです。まだ登りフェーズに入っていない旧道はあっという間に右の眼下に落ちていきます。そして暑い。


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本日2本目見市トンネルにたどり着きました(wiki)。手前には浄瑠璃川という小さな沢が流れ、建設中の見市トンネルは浄瑠璃トンネルという仮称で呼ばれていました。


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反対側の坑口。こっちは急斜面の途中に坑口があり、直で高さのある橋梁に接続しています。斜面には工事で使ったと思われる砂利道が河岸までつづら折りで降りて行ってるのが見えました。


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そして見市川の対岸には旧道の大規模な切土の法面が望遠できます。僕今からあんなところ走ろうとしてるの?


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別角度から。上から下まで高さ100mぐらいあるでしょうか。なぜあんなところに道通そうと思ったんだろう。しかもに。


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本日3本目最後のトンネル雲石トンネルにつきました(wiki)。三角お山のピーク真下に直線のトンネルの坑口にあると美しいですね。空は青いし山は緑だし。でもくっそ暑いので雲石トンネルの旧道に入らず帰っちゃいます。っていうか旧道の入り口がぱっと見見つからなかった。


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雲石トンネルから少し下ったところが見市トンネルの旧道の入り口。こんなに隠す気のない旧道も珍しい。


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暑い登り坂から解放され急な坂道を爆速で下ると涼しい~!それに見て、全然荒れてなくてきもちい!


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おわ、現道から見た巨大切土だ!


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現地で見るとあんまり迫力はないですね。でも土砂災害や雪崩の危険は容易に想像できるます。


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さっき登って行った現道を逆に見返すことができます。左が見市トンネルから直結していた見市橋。右のアーチ橋はロアリング工法で閉合した高滝ノ沢橋。新聞で見たことのある景色だー。


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再び下ります。国道で11%の勾配はきついですね。


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下りはあっという間で現道への合流の直前に雲石橋を渡ります。


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ピリカベツトンネル旧道の鉛川きれいだなって上で書いたけど、こっちの見市川もめっちゃきれい。雲石峡といわれる渓谷で、大きなイワナとかいそうですが禁漁河川です。


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雲石橋を渡り終えた袂には何やら廃墟が見えます。これは旧熊石町が設置した休憩所だそうです。


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雲石橋を渡り終えると鉄骨の資材が保管(放置?)されています。


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旧道と現道との分岐点。旧道は巨大なコンクリートブロックのバリケードで塞がれ、人の往来を拒みます。あんなにきれいな川があるんだから休憩所までは入れるようにしてほしいな。


この記事の情報

主要地点の地図

参考文献

  • 熊石町、『熊石町史』、熊石町、1987年
  • 八雲町、『八雲町史 下巻 3訂』、八雲町、2013年

コメント

  • 当宮奏
    2024-01-11T01:13+09:00(JST)

    通れるようにしてほしいです