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江別第3小学校校舎お別れ見学会

1950~1966(昭和25~41)年は戦後のベビーブームと老朽校舎の更新のため全国的に学校の校舎が建てられた時期でした。この時代に特徴的な学校建築に円柱の外観を持った円形校舎というものがあります。教室の需要が急増したこの時代、採光・音響的に優れた教室を経済的に配置できるとして建築家の坂本鹿名夫が考案した形です。体積の割に表面積が小さいので北海道のような酷寒地では暖房の面でも有利だったと思います。1953(昭和28)年から全国で少なくとも103校が建てられ道内では11校に16棟がありました。そのうちの一つが江別市立江別第3小学校の円形校舎です。この校舎は1956(昭和31)年に建てられから59年と老朽し、来年2016(平成28)年度に学校の統廃合に伴って解体し建て直されることとなりました。解体によって道内で現役の学校として使われる円形校舎は石狩小(石狩市)1校1棟のみになります。廃校や移転したあと今もなお残っているのは石山中(小樽市)2棟、朱鞠内小(幌加内町)1棟、絵鞆小(室蘭市)2棟、古部小(南茅部町、現函館市)1棟、沼東小(美唄市)1棟。棟数は最盛期の半分を切り、残る校舎も沼東小は廃墟化、絵鞆小は1棟解体予定など着々と絶滅に向かっています。そんな希少種円形校舎の解体に先駆け第3小校舎内を公開する見学会が4回行われ、第3小にお別れをしてきました。


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石狩平野のど真ん中。北海道一の大河石狩川に注ぐ千歳川河口の近く、江別駅から北西に約800mにある第3小。北には工場地帯、北西には飛鳥山。この15,812m2の土地に既設校舎3棟、仮設校舎1棟、屋内体育館とグラウンドが配置されています。


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まず手前に見える建物。これは建て替え中に学び舎となる仮設校舎。去年9月まではプールがあった場所で、取り壊して仮設校舎を建てこの4月から使用しています。


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その奥の建物は1965(昭和40)年に完成した西校舎(管理棟)、1,151m2、鉄筋コンクリート造。レンガの町江別のハートに染まり、レンガっぽい化粧を施しています。隣のレンガ校舎とも見た目の相性バッチリ。現在は校長室、職員室、音楽室、視聴覚室等が入っています。西校舎は仮設校舎以外では一番新しい校舎ですがそれでもすでに築50年を経ています。新校舎完成までは仮設校舎と共に使いますが、その後はやはり解体されるのでしょう。目の前の木の目印テープも多分伐採の目印なんだろうなあ。


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西校舎と円形校舎に挟まれているのはレンガ校舎(南校舎)、1951(昭和26)年完成、826m2、レンガ造。普通教室が8つ入っています。西校舎と違ってレンガ”っぽい”じゃなくてマジでレンガを用いています。これは円形校舎と共にもうすぐ解体される運命です。


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本丸の円形校舎(東校舎)。レンガ校舎の6年後、1957(昭和32)年に完成、1,720m2、鉄筋コンクリート造。円形校舎の考案者である坂本鹿名夫自身による設計です。鉄筋コンクリート造ですがレンガ校舎に合わせてレンガをまとったデザインにしたといいます。現在中には普通教室4、特学教室4、家庭科室等特別教室が入っています。


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円形校舎の窓にはこのように掲げられていました。他の校舎には無く、統廃合を匂わせる掲示も無く、円形校舎だけがまるでVIP待遇のようです。愛されているのですね。


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学校の玄関は2箇所。西校舎の妻面にある西玄関と、円形校舎-レンガ校舎間の隙間にある東玄関。東玄関は円形校舎・レンガ校舎が完成した後の1960(昭和35)年、両校舎をつなぐ廊下と付随するトイレと共に作られました。今日はこの東玄関から中にお邪魔します。


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玄関の中。写真を撮ったのは1回目の見学会の折。この時はまだ校舎を使っているとのことでスリッパに履き替えて見学しましたが、4回目にお邪魔したときは解体工事も直前でしたから土足でとなりました。


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建物に入り右が円形校舎。まずはこっちをグルリと回ってみます。


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円形校舎に入って右手には手洗い場があります。当たり前だけど大人になってみてみると高さ超低い。


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左手には給食用リフト。僕の学校には無かったしこういうものがあるって初めて知りました。結構普及しているんでしょうか。どれほど効果があるんでしょうか。


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円形校舎の真中は円形の廊下と螺旋階段になっています。円形校舎が経済的だといわれる最大の理由に外壁の数が少なくてすむということがあります。外壁はすべて教室だけで廊下の分は必要ありません。それと引き換えに外壁に面していない中央は昼間でも灯りをともす必要があります。梁は螺旋階段の外周と廊下の外周に円形のものがあり、放射状の梁6本で結んでいます。廊下外周の梁は引き戸を入れる関係か良く見ると直線の梁です。廊下外周の梁と放射状の梁の交点からは柱が下りています。柱は梁の数より多い12本。廊下の周りには教室やさっきの手洗い場など6つの扇形の空間が設けられています。


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螺旋階段の中央は吹き抜けになっています。少しは灯りを採る効果もあるかもしれません。


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1階の普通教室には特別支援学級が入っていました。この教室は1つの教室を半分に仕切って2分したようです。メインの黒板は扇形の半径の辺に付いていますがこれは例外的。


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特学以外では北側に家庭科室が入っています。物がまだ残っていて中に入っての見学は出来ません。


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2階・3階には3年生5年生の普通学級が計4つあります。どれも南側に置かれているのは最も利用頻度の高い教室の採光を考慮してのことでしょう。扇形の教室の中心に黒板。黒板を囲んで弧状に机を置いたそうです。円形の梁は教室にも1本、建物の最も外側を支えています。中央の廊下に6本あった放射状の梁は外側の教室では12本に増やされています。そして交点には柱。教室の中に柱が1本立っているのは唯一残念。


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黒板のある面は平面。


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一方窓側の面は緩やかな曲線。施工性や使い勝手を考えると円じゃなくて6角形や12角形ぐらいでよかったんじゃないかと思います。


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2階、「さよなら円形校舎」が張られていたのは理科室でした。ここも中に入っての見学は出来ません。


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その他特別教室もまだ使用中の感があり入室はできません。


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4階はペントハウス。じゅうたん敷き。本を読んだり静かに遊ぶ場所だったらしいです。でもこんな目の届きにくい場所僕みたいなヤンチャな男子が台無しにするに決まってるでしょう。


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上から見た螺旋階段の吹き抜け。吹き抜けは全面柵で覆われておりヤンチャな男子がやらかさないように考えられています。


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ペントハウスから北方向には王子エフテックス(旧称王子特殊紙)の工場が見えます。前身は富士製紙といい、1908(明治41)年からこの江別で操業している老舗の工場です。この工場の進出によって人口が増え、1929(昭和4)年にこの第3小が創設されることとなりました。


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北西方向には木々で見えませんが道内指折りの低山で知られる飛鳥山。標高わずか17mにとどまるも、一帯見渡す限りの平野では山と名づけて親しむに値したのかもしれません。


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その他の方向は街が広がります。


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階下へ下りていきます。螺旋階段は上り専用で、下りは別に設けられています。各階にある手洗い場の向かいが下り階段。


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2回折れる中あき階段です。


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次はレンガ校舎を見ます。レンガ校舎は矩形の校舎で、北東面は廊下、南西面は教室。それ以外は特に何も無く造りも簡潔でごくごく普通。様々な形の教育が求められる世情ではここまで単純な校舎はもう建てられることが無いかもしれません。


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1階の4教室には1年生2年生、2階の4教室には4年生6年生。


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レンガ校舎北西端には階段があります。いい雰囲気の木製階段ですね。円形校舎では出来ない手摺で滑る遊びもここなら出来ます。階段下は給食センターのトラックをつける場所。


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これ懐かしい!少年写真ニュースは内容ちゃんと読んだ記憶全くないよね。なのに写真ニュースというものが張られていたということだけは覚えてる。不思議ですね。中学生の頃は図書委員会で朝日写真ニュース張り替える係やってたなあ。


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一室には古いアルバムや学校新聞などが展示されていました。校舎の見学自体は年齢層が万遍なさそうに見えましたがここだけは少々高め。白黒の自分らを見つけてチームおばちゃんが盛り上がっていました。


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炭鉱関連施設の模型で知られる斉藤靖則氏による当校の模型作品もあります。


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中庭側から見たレンガ校舎。奥には西校舎も見えます。右端に見切れているのは体育館。体育館はこの統廃合に際して唯一建て替えない建物です。


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中庭から見た西校舎。この校舎はまだ中を使っており見学は外からのみでした。


江別第3小学校は来年2016(平成28)年度、江別小学校と統合されこの江別第3小学校の場所に開校します。統合後の校名は投票された166件から選定され江別第1小学校に決まりました。校舎の解体工事はこの後5月7日から始まり、2016(平成28)年度中に鉄筋コンクリート造の新築校舎へ移る予定です。校舎のデザインは現在の外観を継承しレンガ風に、そして最上階に円形校舎にもあったペントハウスを復活させます。
また第3小の見学会はすべて終了してしまいましたが、今回統合される相手の江別小でも2015(平成27)年8月8日に見学会が行われる予定なので行ってみてはどうでしょうか。そちらは円形じゃないですけどレンガの美しい学校ですよ。


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主要地点の地図

参考文献

  • 江別市教育委員会、『江別小学校・江別第三小学校統合校 施設整備基本計画』、2013年3月
  • 江別市役所教育部総務課教育政策担当、『江別小学校・江別第三小学校統合校の新築基本設計 | 北海道江別市公式ウェブサイト』(https://www.city.ebetsu.hokkaido.jp/soshiki/kyoikusomu/19123.html)
  • 三河智子、角幸博、石本正明、「北海道における円形校舎について」、『日本建築学会北海道支部 研究報告集』No.76(2003年6月)、pp.415-418
  • 『江別市立江別第三小学校 学校だより みどり』、2014-10-01、「プール解体工事が始まりました」
  • 『江別市立江別第三小学校 学校だより みどり』、2015-02-02、「仮設校舎について」
  • 「平成28年4月江別小学校・江別第三小学校は統合し、江別第一小学校が開校します」、『広報えべつ』Vol.898(2014年8月)、pp.8-9

変更履歴

  • 2015-11-28 脱字冗字修正

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