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二つの金山トンネル

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南富良野町金山の道路には「金山トンネル」が二つあります。竣工で旧道のものと、竣工で現道の二つ。今日はこの二つのトンネルを見に来ました。


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天気予報は30℃越えを予想し、雲一点もない絵の具で塗ったかのような空の下、金山の市街を南に抜け国道237号を占冠村方向へ走ります。南富良野町と占冠村の境が目指すトンネルのありか、金山峠。


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金山峠の南富良野側はここが入り口。ここより下にも無いことも無いけど、現道と被りすぎててほとんど残っていません。


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旧道は砂利道1車線。左に右にカーブして、望外に荒れの少ない峠道に入りました。


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現道の切土で追いやられてますが、ここの旧道は小尾根回避の大回りルートでした。


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道を横切るギリギリ車が通れる程度の雨裂。轍があるから町道か何かなのかと思ってましたが、こういうのを放ったらかしにしてるというのは机上で廃止された道なのでしょうか。


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数少ない金山峠の踊り場でクルン。


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金山峠に到着しました。陸の孤島南富良野町と同じく陸の孤島占冠村を隔てる分水嶺を標高518mの掘割で越えます。年(昭和26~28年)に改修工事で線形が微妙に変わりましたが、旧来から峠はここ。


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峠以降、占冠村に入ってから車道の容姿は一変し、ただ一筋鹿道が付いているだけ。


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2~3箇所、こういうことになると鹿はお利口に山を巻き、新たなシングルトラックを開拓してくれています。


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だいぶ下ってきて現道のエンジン音がすぐそこまで迫ると再び砂利の車道になります。この道、現在は峠道ではなく沢のほうに降りる道が本流となっていました。


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警笛区間が終わるのでもう爆竹も熊鈴も仕舞うことにしましょう。道は写真奥で左に大カーブ。


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現道に合流して旧道は終了。


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という金山峠を現在は金山トンネルで抜けるようになっています。の新しい方の金山トンネルです。旧道の金山トンネルは?いい質問ですねぇ。始めに「旧道の」とは言いましたが、「金山峠の旧道」とは言っていませんよ!なんと古い金山トンネルは現金山トンネル旧道ではなく全く別の旧道にあるんですよ。


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僕も始めは金山峠に2世代のトンネルがあるんだと思ってたんですけどね、穴が開くくらい旧版地形図見つめてもトンネルが無いんですよ。で、峠から目を離して地図上妄想旅行はじめたら古い金山トンネル発見。なんと金山市街の北にあったんですね。現況調書などに載ってる住所をちゃんと見ときゃこんな遠回りにならなかったのに。


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旧道の金山トンネル付近をもっとよく見てみましょう。(左図)始めは道が崖の上、鉄道が崖の下。この時金山トンネルは崖下の鉄道用トンネル。(中左図)鉄道が現在のルートにお引越し。金山トンネルは一旦廃止。(中右図)すかさず道路は鉄道跡地にお引越し。道路トンネルとして金山トンネル復活。(右図)最後には道も転居し現在の場所に落ち着いています。これで金山トンネルは2度目の廃止。


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朝、金山から南下した国道を、午後は北上。現道緑橋の手前で旧道が分岐します。


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密度の低い葦原に囲まれ、嫌がらせのように道路の跡だけ濃い笹薮。


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やがて林の中に入り込むと笹は無くなります。右から空知川の太い流れが迫り、左では崖が姿を現しました。平らな地面は1車線の道がちょうど1本引けるだけしか残されていません。


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橋銘板によると「いわしりはし」、竣工。漢字書きの名前は橋銘板喪失のため分からず。単径間コンクリートガーダーです。


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急に木々が減りだしました。遠くにはアーチ橋のようなものが見えて期待感を盛り立てますが、崖が迫ってる所で視界が開けたらロクなことはありません。


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ね?


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高さ10mもあるんじゃないかという崖錐に道は完全に埋没。見上げればフルボッコにされた雪崩防止柵が垂れ下がり、風が吹くたび新たな落石の攻撃を食らっています。見下ろせば急に落ち込んで足元も見えぬ垂直な川岸が迂回路役を断固拒否。


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というわけで鹿の踏み跡を改良し僕も通れるようにしました。さすがに自転車では怖いのでデポしてきました。


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崖錐トラバースど真ん中から穿入蛇行の空知川を臨みます。現在は道路も鉄道も非の打ち所のない線形で抜け、地形がどうとか意識することもありません。


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100m近く続いた砂利のキャットウォーク、その終点は穴でした。


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これが竣工の方の金山トンネル。延長16.60m。車道幅員4.0mに対し、限界高は4.5mという縦長の寸法。よく見ると足元の壁は少し窄んで馬蹄型になっています。鉄道用では大活躍でも道路用では少ない煉瓦の覆工。線路として建設されたトンネルを無改修で道路に転用したとみられます。


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ここに鉄道が開通したのはのものとされる写真には既にこの場所にトンネルが写っているので、1933(昭和8)年竣工というのは道路化の年で、実際は明治のトンネルであることが分かります。


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鉄道時代も金山トンネルと呼ばれていたみたいですが、現在金山トンネルというとこれのこと。金山トンネルは名前だけ出張して現在も生き続けているのです。


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トンネルの先は地面のように見えますが、遠くから見えていたアーチ橋の上。片側が山腹に接した桟道橋です。


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桟道橋の中に1箇所だけ歴とした橋が架かっています。橋銘板によると上渓橋、竣工。


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上渓橋の橋台は煉瓦橋台。鉄道臭いですね。


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続きの桟道橋は路盤が流され胸壁の裏側丸出し。


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ちょっと横に出られる所からアーチをのぞいてみると、4重イギリス積みの煉瓦アーチに見えます。


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アーチの桟道橋は上渓橋を挟んで南側が2連、北側が7連でした。桟道橋を渡り終えると路盤は元の植生を蓄え始め、木々が天を覆い、崖も川も遠ざかっていきます。


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現道に戻ってきました。右で一人かくれんぼしてる「そらち川」の青い標識の右側を旧道が通ってます。この後また巨大崖錐前にとんぼ返りしてチャリを回収、現場を後にしました。


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今日参考にした地形図は金山ダムに沈んだ根室本線を鑑賞したくてゲットしたのですが……やっぱ今時期は水多いっスなぁ。


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主要地点の地図

参考文献

  • 南富良野町史編纂委員会(編集)、『南富良野町史 下巻』、南富良野町役場、1991年
  • 占冠村史編さん委員会(編集)、『占冠村百年史』、占冠村、2006年
  • 著者不明、『橋現況調書』、北海道開発局、1964年

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