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歩いて豊平峡ダムを見に行く

いやー夏ですねぇ。昨日札幌の気温は30℃を越えたようでフラッフラになった方もいるのでは?僕は本州にいた頃寒さ大嫌い暑さ大好きで、30℃なんて屁でもなかったのに、昨日は熱中症にかかりかけてフラッフラでした。いまだ冬の寒さには慣れてないくせにそんなとこだけ北海道に対応しないでほしいですよ。
そんな中今日は避暑になるかなと思い、水があり山に囲まれ標高の高い豊平峡ダムに行ってきました。


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豊平峡ダムに続く道はただひとつ。それが豊平峡ダム専用道路。正式には札幌市道みたいなので公道ではあります。しかし途中(地図中「P」)からは幅員の狭さと自然保護を理由にバスしか走ることが出来ません。走るのはバスだけ。じゃあ歩くのは?そう、徒歩はOKなんです(自転車はダメ)。じゃあ歩くしかないでしょう!


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駐車場にはダム行きのバス停と門番のオジさんが待機していました。一応オジさんに「徒歩で行っても大丈夫ですか?」と確認。「大丈夫ですけどバスもありますよ」「トンネルで涼みたいんで(笑)」と本心を告げて入ります。オジさんを過ぎるといきなりトンネル。


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冷水トンネル。長さ1,021.5m。


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右の壁際が歩道。


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左は1車線の車道。相互通行なので入り口には信号が着いています。『北海道の道路トンネル 第1集』ではトンネルの幅員は7.20mで歩道は無しになっているので、元は車道2車線で歩行者の通行を想定していなかったんでしょう。


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入坑後100mぐらいは特別涼しくも無いですが奥はさすがに涼しいっすね。寒いじゃなくて丁度言いい涼しさ。


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およそ20分かかってトンネルを抜けました。その間バス以外にもダム職員らしき乗用車や宅配トラックなど数台の通行がありましたが、歩行者は前にも後ろにも0。


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トンネル出口で信号待ちしていたバス。駐車場とダムの間を結むハイブリッドの電気自動車です。素体はトヨタのコースターっぽいですが、ボンネットをつけて客席は窓を取り払っています。ナンバープレートは無くここが専用道路であることを教えてくれます。


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冷水トンネル出口の右側には怪しすぎる茂みが。


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写真じゃ分かりませんが右も左も崖で、わざわざ平らな地形を作っているんです。どう偏屈に受け取ったって道の跡としか思えないですよね。地図にも徒歩道と出てるしこの先にはトンネルの記号だってあります。


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作りはチャッチいですが桟道橋だってありましたよ。


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そして決定打がこれ。ネタは上がってるんだ!白状しろ!おまえ道だったんだろう?


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鋼材でアーチを組み余掘りとの隙間に木板差込み細かい落石を防止。コンクリートはアーチの鋼材の固定だけに使っています。側壁と路面は完全な素掘り。非常に簡易ですね。幅高さともに3mほどでしょうか。


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しばらく歩くと唐突に遊歩道にありげな案内標識が立っていました。こちら方向には「ダムサイト園地」、向こう方向には「定山溪自然の村」。


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ここで皆さんにひとつ謝らなければいけません。この横道は定山渓自然の村から延びていた廃遊歩道なんです(地図中橙線)。もちろんそのことは百も承知。


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さらに遊歩道は定山渓森林鉄道の廃線跡を利用したものなんです(地図中緑線)。もちろんそのことは二百も合点。


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でも遊歩道にあって林鉄に無い部分(地図中青線)、今歩いてきた道の正体が謎なんですよね。遊歩道のために崖を削って橋を架けトンネルを掘るわけないし、林鉄も走ってない場所だし。一番考えられるのは豊平峡ダム専用道路の建設時に作られた工事用道路でしょうか。大型車は通れないけど小型の重機くらいなら行けそうですし。遊歩道がトンネル前で切れているのもこの説を推しますね。豊平峡ダムの工事誌とか見てみたら分かるかと思いましたが、こういう時に限って工事誌無いんですよね。


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ここから林鉄跡をダム方向へ行けるだけ行ってみます。林鉄は豊平峡ダムに沈んでいるのでどれだけ行っても高々ダムどまり。距離や時間的な心配が要らないので気兼ねなく行くことが出来ます。定山渓森林鉄道は1938(昭和13)年5月6日起工、1941(昭和16)年12月10日竣工。定山渓鉄道の終点定山渓駅を起点として豊平川に沿い10.824kmと、1948(昭和23)年4月から1954(昭和29)年12月までの工事で延長した8.376kmを走りました(Wikipediaでは延長分を「右股線」としてるみたいですね)。これに加え1941(昭和16)年2月20日から同年12月25日にかけて3.205kmの左股線が建設されています。


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冷水トンネル出口付近から流れ下っている沢(滝の沢)と本流豊平川の出合い付近には橋が架かっていました。林鉄跡なのに道路橋。ダム建設に際して道路用に架け替えたのでしょう。


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橋の下には林鉄のものと思われる橋脚が転がっていました。


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地図にあるトンネルの位置に来ました。トンネルは確かに存在していました。


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定山渓森林鉄道中には本線にこの1つ、支線の左股線に1つ、計2箇所のトンネルがありました。左股線のほうは地形図からトンネルの記号が抹消され、現地にて確認はしていないのですが林道の敷設で切土されており開削の可能性大(地図)。つまり定山渓森林鉄道で現存する唯一のトンネルです。ろくに軌道跡と分かる遺構が無いこの林鉄にある数少ない生き証人。


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トンネル内には施錠された柵と脅し文句。物理的障壁と精神的障壁を作るとはまさに鉄壁。もやしっ子で豆腐メンタルな僕には到底越えられません。


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越えたところで木々の向こうに白い壁=ダム堤体が見えてるんですよね。


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無理して病院送りorお縄頂戴になる前に戻って遊歩道のほうを見てみます。さすが遊歩道さん、シングルトラックとはありがたいです。でも豊平峡ってなんかもっと景勝地だと思ってたんですが、全く景色無いですね。ずっと森の中。


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「昭和四」「札」のペイントが施されたコンクリート塊が右手に現れました。擁壁ではなく昔使われていた発電所の送水管だそうです。林鉄の建設は近接する送水管の保全に苦労させられたとか。


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この先5分も行けば定山渓自然の村に入って遊歩道は終わりです。実は今日こちら側から歩いて入ろうと思っていたんですけど「自然の村に用事の無い方は入れません」と言われちゃったので、自然の村には入らずここで引き返します。っていうかダムまで行こうとしていたのに3歩進んで2歩下がってきちゃいました。


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はい、戻ってきました。冷水トンネルの出口です。正面には第一滝見橋・第二滝見橋、そして豊平峡トンネル。


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橋上から左には九段の滝、左には千丈岩というのがあり見所になっているみたいです。


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豊平峡トンネルは381.5m。パパッと抜けちゃいましょう。


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2kmの道のりにかかった時間実に2時間15分。やっと豊平峡ダムに到着しました。


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デカい。なんてったって北海道最大級のダムですからね。堤高102.5、堤頂305.0m、総貯水量47,100m3だそうです。


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見ろ!人がゴミのようだ!(って言いたかっただけ)


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北海道でわずか2つだけのアーチ式ダム。もうひとつの奥新冠ダムは日高の超山奥にあるそうなので一般の目に触れるのは道内ここだけ。奥新冠ダムに変に冒険心くすぐられますね。チャリで林道片道30km→日帰り出来るかどうかのギリギリのライン。誰か一緒に言ってくれないかな(チラッチラッ)。


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これがダムの管理所。今日はここにも用があります。トイレじゃなくて。


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管理所から中に入れるんですよ。この中ひんやりしてて滅茶苦茶気持ちいいんです。今日だけの特別ですよ。


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さらになぜか「山の音楽家」が大音量で鳴るエレベータに乗って堤体の下のほうに降ります。


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エレベータから降りるとこれ。大放流が間近。そして僕にとっては罰ゲームみたいにシースルーな床。


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堤体のへそについた建物(っていうの?)に入りました。小さな窓から外を見る人がいるのでさぞや豊平峡が美しかろうと思ったら・・・・・・。


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ドーーーーーー。


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放流が行われている現場。観光放流だからと馬鹿には出来ない大迫力。


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左が観光方流用のバルブ。右が通常使用されるバルブ(しかも2門ある)。最大方流量は70倍も差があります。今放流しているちっちゃい観光用バルブでこれだったら、通常用で放流したらどうなっちゃうの?この世が終わっちゃうの?


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急に話戻してすみませんが、定山渓森林鉄道の跡は見当たりません。茂みの中にトンネルがあるはずなので、跡はトンネルを出たらすぐダムによって消滅してるということになります。


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ただいまー。いやー涼しかった。


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最後におまけとして定山渓温泉にある涼しいスポットにも足を運んでみました。


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旅館やホテルが並ぶ温泉街の一角、岩戸観世音という寺っぽい建物。寺で涼しいといったら怪談ですが、ここはちゃんと温度が涼しいところ。


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中は普通の寺のようですが、よく見てみると?


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寺に洞窟!


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仏様嘘つかない。本当に洞窟。出るときにここを管理しているらしきオジさんに聞いてみると自然発達の洞窟ではなく人口的に掘ったトンネルだそうです。


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こういう道が120m。こんな涼しいのに誰もいないなんてもったいない。僕が代わりにに涼んでやんよ。


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壁にはところどころ観音が安置されています。ありがたやありがたや(涼が)。


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洞窟の一番奥は外に通じていましたが、閉鎖されていて出入りは出来ません。


今日の札幌の最高気温は昨日よりも暑い32.5℃だったようです。そんな酷暑の日に一日中涼しいところに居た今日だけ勝ち組な僕でした。

この記事の情報

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主要地点の地図

参考文献

  • 国土交通省北海道開発局 札幌開発建設部、『周辺の道路事情説明』(http://www.sp.hkd.mlit.go.jp/kasen/08isiken/02genba/26damtokan/15.html)
  • 札幌開発建設部 豊平川ダム統合管理事務所 豊平峡ダム管理支所、『豊平峡ダムは安全で豊かな暮らしを守ります。』(豊平峡ダム見学デー配布資料)
  • 「北海道の道路トンネル」(第1集)編集委員会(編)、『北海道の道路トンネル 第1集』、「北海道の道路トンネル」(第1集)領布委員会、1988年
  • 森井知孝(著)、『森林鉄道の一生-札幌営林局管内-』、林野弘済会札幌支部、1969~1971年

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コメント

  • にゃんこ
    2019-06-03T15:35+09:00(JST)

    こんにちは!
    昨日豊平峡ダム行ってきたんですが、
    冷水出口の怪しい茂みは立派な立入禁止看板が立てられていて入れませんでした(T_T)
    素掘りの簡易矢板トンネル見たかった~!(´・ω・`)

  • Morigen(管理人)
    2019-06-04T13:05+09:00(JST)

    にゃんこさんこんにちは!
    豊平峡ダムは今時期散歩にいいですよね。涼しいし、自然いっぱいだし、トンネルあるし。
    僕が行った2012年はヒョイと入れたんですが、そうですか今はそうなっちゃいましたか。
    ごめんなさい。
    なんか僕が行ったあと明確な立入禁止になっちゃう所が時よりあるみたいで、
    なんででしょうね、開発局の方がこのブログ見ててくださってるのかな?
    それがもし本当で僕のせいだったらごめんなさい。
    下流側からならまだ行けるんでしょうかね?
    にゃんこさんほどのトンネル好きならぜひとも見てもらいたいですね。

  • にゃんこ
    2019-06-04T14:11+09:00(JST)

    あはは!開発局に監視されてますね(笑)
    ていうか私がトンネルに目覚めるのが遅かったです~(‘A`)
    初めて仕事で関わったのが2013年でしたからね(´・ω・`)

  • 匿名
    2020-10-19T17:31+09:00(JST)

    はじめまして、通りすがりです。
    お前道だったんだろう!で笑ってしまいましたw