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苔の洞門

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北海道でまあまあ有名な観光スポットに苔の洞門というのがあります。道外の人ならば「何それ?ドコ?」、道民ならば「ああ、あそこらへんだっけ」て言うぐらいの位置づけでしょうか。行ったことのある方ならおそらく支笏湖とセットで観光したであろう。ということから察しがついたと思われますが、千歳市支笏湖畔に位置しています。っていうかこのページ見てるってことは場所ぐらいご存知でしたよね。


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支笏湖の南には風不死岳と樽前山という2つの活火山がそびえ、樽前山は有史以降も度々噴火が起こる「ガチ」の活火山です。上の画像を見ると風不死岳は深い谷が発達し噴火からかなりの時間経過を感じさせますが、逆に樽前山は浸食が進んでおらず堆積した噴出物がなめらかな山容を作っています。苔の洞門はその樽前山からの堆積物が削られてできた渓谷状の地形です。
樽前山は約5万5千年前に噴火した支笏火山の後カルデラ火山の一つで、樽前山自体の噴火は約9千年前に始まったそうです。当山は現在も立ち入りの制限される活火山でありますが、1739年の噴火による火砕流堆積物が土石流によって削られ、さらに壁面に苔類・地衣類が成長し今日ある神秘的な苔の洞門の姿が出来上がりました。地形ってほんの短時間でできちゃうんですね。すごいぞ地球!
そんな生い立ちの苔の洞門ですが、2001年6月3日朝、苔の洞門運営協議会の職員が見回った際、洞門の入り口から約50mの地点で壁面が幅3~4m・高さ5mにわたって崩落しているのが発見されました。翌4日の関係者による調査の結果再崩落の危険があるため同日夕から通行禁止となりました(3~4日夕まではなぜか通常オープン)。この通行禁止措置は現在まで続くものです。2002年7月からは洞門入口に設けた展望台から洞門をチラ見せする焦らしプレイを始め、僕のような変態を扇動し始めます。8年間関係者の間で「いいかなー」「だめかなー」が続いて、ついに2009年から一般市民が参加するモニターツアーが始まりました。観光ではなくあくまで調査です(名目上はね)。これ以降苔の洞門一般開放に向けてモニターツアーが毎年行われています。


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今年2011年は3回のモニターツアーがあり、3回目に応募したら見事当選しました!しかも1回目2回目は台風と大雨で中止になったので、今年唯一のモニターツアーに参加ということになりました。


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ということで、苔の洞門来ました。集合居場所の苔の洞門ネイチャーセンターには既にたくさんの人が集まっています。ただ苔の洞門展望台に行くだけなら普段着で構わないはずですが、みな例外なく山菜取りや登山者っぽい恰好なのでモニターツアーの参加者と分かります。センターで受付をしたらヘルメットと熊鈴、資料を受け取って準備完了。


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2001年の崩落場所を迂回するためまずは近くの林道で苔の洞門の終点まで行きます。僕がオフィシャルに林道ゲートを越えるのは人生最初で最後だろうな。


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でたジムニー。ほんとどこの林道にもいますね。


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林道から横に分け入り道なき道へ。ピンクテープとみんながいなかったら絶対迷います。


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ついに苔の洞門が見えてきました。垂直の壁の上にいるため降りられる場所まで更に迂回します。


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ヨッコイショで下まで降りました。この辺りは壁はなく河原の様な様相です。今現在は水はありませんが、雨が降ればたちまち川と化す涸れ沢だそうです。ちなみに沢の名は「洞門の沢」と言います。洞門の沢を更に遡るともうひとつの苔の洞門がありそちらは「第二洞門」、今から入る下流の方は「第一洞門」と言います。第一洞門の延長約420mに対し第二洞門は約775mと2倍近い長さ。すごく行ってみたいですけど今日は第二洞門の方には入れません。


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左の写真は冒頭の方で書いた火砕流でできた岩石、溶結凝灰岩だそうです。火砕流は500~600℃の温度で、もし木が巻き込まれると右の真っ黒な炭化木の出来上がりです。もともと木なんですぜ。


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ここからようやく苔の洞門(第1洞門)に入っていきますよ。終点では柱状節理っぽい亀裂に樹の根が入り込んだんだかなんだかで崩れたそうです。ちゃんと説明聞いてたはずだけど3歩以上い歩いてしまったので忘れました。


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見て見て、この最初からクライマックスって感じ。冒険気分存分アドレナリンMAXなるでしょ。


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約30種類という苔が余すことなく壁一面をアデランスしています。薄毛に悩んでる人がここにつっ立ってればそのうちフサフサになれるかもしれません。(但し緑色でジメジメ)


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ときどき壁に入っている垂直で大きな亀裂は、火砕流が冷えた時に岩石が収縮してできたんだかどうだったか、説明から3歩以上歩いたので失念。


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今度は行く手で人の渋滞。これは……


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梯子を下りてチョックストーンくぐり。


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そして見えてくるさらなるダンジョン。ダンジョンRPGだったら地下3階ぐらいまで来てる。


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人の背と壁の高さを比べて見てください。


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さらなるチョックストーンを梯子で下ります。


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下ればもちろん深くなるわけで。幅もだいぶ狭まって圧迫感出てきました。


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またチョック。これは樽前山の噴出物ではなく風不死岳の溶岩が樽前山の火砕流に取り込まれたもの、または流されてきたものだそうです。由来が違うということでその質も周りと違う堅くて重い安山岩だそうです。にしてもよくもまあこんなぴったりな岩があったもんですね。神様あんたは空間の匠か。


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このモニターツアーの最終到達地点。崩落地点は危ないからダメ。つまりここで行き止まりになります。幅も高さも極まってもう何て言うかヤバいです。でも出川哲郎だったら「ヤバいよヤバいよ!」じゃなくて真顔で「スゲェ……」って言うと思ます。 立ち入り禁止になる以前は苔の盗掘・落書きが相次いでいましたが、苔は1~2年もすればほぼ元通りになり、現在では痕跡を見ることはありませんでした。解放が再開されてもそういうマネは絶対してほしくないですね。


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壁に刻まれた泥の跡を見ると股下ぐらいまで水が来ることがあるみたいです。雨が降ったら樽前ガロー状態でしょうね。


行きと同じ道を終点まで戻って、休憩&自然に始まる行動食交換会。そしてまたセンターまで戻り解散となりました。今日は天気も熊も空気読んでくれ、無事に終わりよかったですね。早く解放が実現して一般の方々にも実見してもらいたいと思います。


最後に普段から解放されている展望台も見ておくことにしました。
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展望台はセンターが入口で任意の協力金を支払います。相場がワカラン。とりあえず100円。センターから展望台までは洞門の沢の砂地が続きます。車いすの方はガンタンク化した方がよさそうです。


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展望台手前、苔の洞門入口。


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展望台まで上がると結構人でいっぱいです。ここから先はKEEP OUT!


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展望台から見れる苔の洞門。一般の観光客から見たらこれで満足なのかな。僕としてはさっき中を見ちゃったから物足りないなあ。


そんなあなた、中に入りたくはありませんか?ここはダメなんですけどハイパーな人向けのうまい話があるんですよイヒヒ


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苔の洞門からは風不死岳を挟んでちょうど反対側。楓沢の洞門というところに苔の洞門と似たロケーションの場所があるんですよ。しかも立ち入り禁止じゃないんですぜ。


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入口は国道の紋別橋。車道の方には白看がありますが、こちら歩道の方にはありません。その上銘板が横に付いていて名前も楓橋という不親切設計。とりあえず見逃さないように。


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楓沢にに入ってひたすら遡ります。楓沢も洞門の沢よろしく涸れ沢なので、洞門を見に行くぐらいなら特に靴を濡らす心配はありません。


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入林から15~20分ほどで川幅が急激に狭窄してそれっぽくなってきました。


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ほい来た。


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函も苔も本家本元に引けを取らない規模だと思いますが、管理されていないのでこういう荒れているところがあるのが残念です。今年は台風と大雨がありましたからそのせいでいつもより荒れているだけかもしれませんが。


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ついには倒木が洞門をふさぎ行く手を阻む事態発生。こういうのが決壊して土石流になるんでしょうね。


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入口から徐々に深さを増してきた楓沢の洞門も河床の上昇で振り出しに戻されました。


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壁面にはガリガリと音が聞こえてきそうな引っかき傷。雨が降れば倒木が流されるんですね。


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再び深さを増して苔の洞門チックになってきました。


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それなのにあっさりと期待を裏切り洞門をふさぐ倒木さん。さっきの倒木は手掛かり足がかりがあり余裕のよっちゃんで越えられましたが、こちらはそれが少ないうえに滑るので登るのをあきらめここで引き返すことにしました。楓沢の洞門は風不死岳や樽前山に至るマイナー登山道なのでこの奥の様子をご覧になるには「楓沢 風不死岳」とかでググってください。

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参考文献

  • 大橋弘一(著)、『支笏・樽前』、北海道新聞社、2002年
  • 支笏湖の人と自然編集委員会(編著)、『支笏湖の人と自然 Nature and lives in lake Shikotsu-ko』、支笏湖の水とチップの会、2007年
  • 若松幹男、平成23年度「苔の洞門実地調査(モニターツアー)」配布資料内『苔の洞門ガイド 地質的アプローチ』
  • 『北海道新聞』、1989-08-03朝刊1面、「千歳・苔の洞門、札幌・植物園のブナ-自然に凶刃。消えぬ傷、嘆く管理者」
  • 『北海道新聞』、2001-06-06朝刊全道34面、「苔の洞門で岩盤崩落 丸1日経過後、通行禁止に 支笏湖畔」
  • 『北海道新聞』、2009-08-09朝刊全道遅版総合1面、「8年ぶり苔の洞門 モニター調査」

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