小平町のトンネル

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おとといの風邪・昨日の寒波襲来。なんか神様に外出するなと言われてるような気がする今日この頃です。


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昨日の羽幌炭鉱らとともに留萌炭田の一翼を担っていた達布炭鉱から、運炭のために留萌までを結んだ天塩炭砿鉄道のトンネル。この鉄道には第1から第3までの3本のトンネルがあり、第1は拡幅改修し北海道道1048号萌平トンネルとなり、第3は町道小平蘂左岸線沖内トンネルに転用された後現在はコンクリにより密閉。ということで現存する同鉄道唯一のトンネルが目の前の第2トンネルとなっています。


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地図では直線に見えますが向こうの光は見えません。


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少し中に入って写真を撮ると崩落が写るのですが、肉眼ではうっすら壁らしきものが見える程度の光量しか無く、崩落とは判断できませんでした。実はちょっとだけカーブしたトンネルでうっすら見えているのは側壁に違いないとも思って奥まで進んでみます。


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なんとなく分かってたけど否定したかった現実。


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なので反対側。4月中旬にもなってまだ2m位雪が残ってます。


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見事に坑口を横断する巨大クラック。どれもこれも幅がセンチ単位のクラックだというのにまだ崩れてないというのは、もはや賞賛するべきでしょうか。


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中も凄いことになってますよ。直線トンネルだというのに土圧で側壁が太り、部分的に曲線トンネルになっているかのよう。もちろん盛大なクラック入り。おまけにさも当たり前かのように鉄骨の補強が加えられています。補強する必要があったってことは現役時代から変状が激しかったんでしょうね。


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奥の方は崩落地点までオール水没。水深はそれほどでもないけど、目測200mの距離をジャブジャブ進んで分かりきった結末を迎えるだけだなんて入りたくないでござる。絶対に入りたくないでござる。


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直線トンネルが水没してるんだから直線になるはずの水涯線は、変状により素掘りトンネルのようにグデングデン。奥の方では鉄骨の補強が2箇所入ってますが、それぞれの馬蹄型は何度見ても一致しません。すなわち側壁がせり出してきているのです。うむ、これは入ったら負けだと思います。


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トンネル1本で1日時間は潰せず町内でロケーションチェンジしました。小平町の中心部から国道で北に向かおうとすると小平蘂川を渡り小高い名無しの岬をトンネルで抜けるはずです。


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右の遠くに見える国道のトンネルー小平トンネルは2003(平成15)年の開通で、左には真っ直ぐ旧道が伸びています。


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2003(平成15)年までの旧小平トンネルは埋められていて入坑も姿を拝むことさえも出来ませんでした。


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トンネルが通っていた岬の上は現在キャンプ場。そこまで道を駆け上ると小平の市街地が良く見渡せます。今は地図に名前の載っていないこの岬は、松浦武四郎が著した『東西蝦夷山川地理取調図』には「エンカルウシ」と載っていました。多分「見張り場」という意味のアイヌ語なので、ばっちり名は体を表しているというわけです。


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1970年に旧小平トンネルが出来るまでは名無しの岬、改めエンカルウシの縁をトンネル無しで通っていました。次はこの旧旧道に入ってみたいと思います。


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旧旧道沿線には目立った施設は無いし2世代も前の古い道ということもあり、あまり使われていないみたいです。


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こんなにきれいな道を独り占め。旧は廃道だったのに旧旧は廃道ではないようです。


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見通せる限りずっと崖下の何も無い道が続きます。松浦武四郎や近藤重蔵たち探検家はこの絶望感をどう克服したんだろう。メンタル強すぎるよ。


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旧旧道の終わりは現国道にぶつかる丁字路でした。が、去年あたりから橋の架替えに伴い道は切られています。


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現国道に入って旧旧道を振り返ってみるとエンカルウシの上には展望台が建っていますね。形態は違えど今でもエンカルウシ(見張り場)が有言実行されています。


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小平トンネルの旧道はもう終わりましたが、もう少し進むと別の旧道があります。普段だったら気にも留めない短い旧道で現存する遺構も微小。その唯一で最大の物がこのトンネルなのですが……そこだよ、ここココ。道路の脇にあるでしょ?あ、ごめん無いね。こっち側の坑口は消滅してるみたいです。


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反対側の坑口に回り気を取り直して。ほら、これコレ。ね?あ、無いね。


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という冗談は止しておいて、これが坑口。


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開発局「またつまらぬものを斬ってしまった」と言ったかどうかは定かではありません(いや言ってないだろ)。


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「留祢无登古左満」。斬られる前の写真は「デジタル de 風景」でどうぞ。時代的に右書きかなーとは誰でも思いますよね。そうはそうなんですけど、漢字じゃなくて実はひらがな。普通のかなではなく変体仮名(or万葉仮名)。風貌的に「ずいどう」と書いてそうだけど実は「とんねる」。と数々のトラップをかいくぐりやっと読めた単語は「まさことんねる」。つまるところ「真砂トンネル」。1888(明治21)年、住民が440円の寄付を集め和尻トンネルというトンネルが開削されたらしい事が天塩国要覧に出ているそうです。1912~1913(明治45~大正2)年、道路の拡張工事にあわせてトンネル名は和尻トンネルから真砂トンネルに改めたので、和尻トンネル=真砂トンネル。真砂トンネルは125年も前に掘られたトンネルなんですね。


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もうひとつエンカルウシのトンネルに入ってみます。目の前には現国道の小平トンネル。コレのことではなくて、右の茂みの中に隠れる廃トンネルがターゲット。写真クリックしちゃった方々御免なさい。まだ写ってないです。


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「小平トンネルの旧トンネルは埋められてたし、旧旧道はトンネル無かったし、一体何の廃トンぞな?」と思ったらまだ素人さん。「この辺歩くんならどうせ羽幌線だろ」と思ったら玄人さん。あなたはどっち?


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ベニヤ板で封鎖された形跡はありますが腐れてほぼすべてが消え去っていました。


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地図では直線に見えますがほんのわずかに弧を描いているようです。


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このトンネルは羽幌線の小平駅-花岡仮乗降場間にあった小平蘂トンネル。次々解体される橋とは対称にトンネルはよく残っている羽幌線です。


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花岡側は浅く水没。油断して踏み込んだらバラストが緩くなってて、危うく長靴も水没するところでした。


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花岡側の坑口にも封鎖の跡がありますがやっぱり開口。何かワビサビのようなものを感じさせる汚れっぷりです。


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トンネルの先、花岡方向の路盤は橋の撤去で辿れなくなっているので引き返すことにしました。

この記事の情報

主要地点の地図

参考文献

  • 小平町史編さん室(編集)、『小平町史 続』、小平町役場、2001年
  • zwiebel他、『北海道 道路トンネルデータベース 国道232号 – 北海道 道路レポート"カントリーロード"』(http://hokkaido-douro.net/tunnel/R232/index.html)
  • 日本国有鉄道北海道総局(編)、『北海道鉄道百年史 中巻』、日本国有鉄道北海道総局、1980年

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