日高横断道路(中札内側)

「家に閉じこもりなんてイヤ!」と着のみ着のまま家を出て、サイクリングに繰り出したのは一昨日の話。そして昨日も場所を変えサイクリングを楽しんだ訳ですが、両日ともイマイチぱっとしない………。そうだ、折角のサイクリングなんだから自転車でしか行けない所に行こう。


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と赴きたるは中札内村、北海道道111号静内中札内線。この道路はまたの名を日高横断道路あるいは日高中央横断道路と称し、道内一有名な未成道路としておなじみとなっている路線です。その道程のほとんどは既に車が通れる程度の道が引かれていますが、残念なことに一般車両は通ることができません。日高山脈の東側、つまり中札内村側の自転車でしかいけない部分を拡大したものが上の地図です。これが今日のターゲット。右下からピラトミ山北麓をぐるっと回り、静中トンネルで分水嶺をくぐる日高横断道路。ゲートから先が自動車通行止めということで、自転車でしか行けない区間になります。


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ゲート前に参上。かすれた白線、突如途切れる舗装、行く手をふさぐゲート。いい感じに未成ってます。ゲートを閉めているのに先のカーブと幅員減少を知らせる警告標識、一般車両のやってくるはずの無い方向を向いた電光掲示板も、未成道感をあおります。周辺は山と川ぐらいしかないのに左には転回所ではなくわざわざ駐車場を作るっていうのは、「ここに車を止めてどうぞお入りください」っていうフリですよね?じゃあ喜んで入らせて頂きましょう。


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ゲートくぐってから一つ目の構造物、望岳覆道までは地図読みで1.2km。しかし、この間には当初3つの覆道が予定されていて、次に1つにまとめる計画にチェンジして、最終的には基礎杭の打設が始まった所で頓挫してしまったという覆道計画がありました。覆道の名前は照林覆道(豊水覆道)、長さ620m。1900(明治34)・1901(明治35)年に一等三角点札内岳の選定埋設のためこの地に初めて足を踏み入れた和人正木照信・吉田林太郎の苦難をしのび、両氏から一字ずつ取り覆道の名前としています。


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そんな幻の覆道区間は何の変哲もない一車線幅の砂利道が伸び、砂利は締まっていてえぐれはほぼ無し。たまにガードレールとかもあったりしていい林道ですね。あっ、これ道道でした。なんてこと思っている間に構造物発見。


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勿論照林覆道ではなく望岳覆道でした。川沿いを遡るこの道にあって、深い河原の砂利層を貫く基礎杭はなんと深さ19mだそうです。


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長さは140m。天井がやたらと高く見えますが実際高いです。急な斜面を切土すると崩落する危険があるので、道幅の確保には盛土を基本としているのですが、その土はトンネルを掘った残土を利用する予定だそうです。そのトンネルも着工されずに凍結したので、盛土されるはずの地面は低いまま。ということで結果天井が高くなってるっぽいです。


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「望岳」というのは覆道を出た所から雄大な山岳等を望み得ることからこの名が付けられたそうですが、草木が繁茂してはそうはいきませんね。


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覆道を出たら再び林間を抜け次の覆道が見えてきました。


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写真では扁額が見にくいですが、長さ294mの夫恋覆道。「夫恋」の読みは「おっとこい」?アイヌ語っぽく「ふうれん」?正解はCMの後!


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夫恋覆道を抜けた所にある案内板に正解が書かれています。正解は「つまこい」。IMEに単語登録っと。由来は同案内板にある通り。札内川を渡渉してるのに五の沢で溺死するって何言ってるかよく分からないですが、とにかくそういうことだそうです。


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夫恋覆道を過ぎると天狗橋という短い橋を渡り、滝見橋に至ります。天狗橋前後はこの辺で最大の難所とされており、ここをトンネル2つでスルーしちゃう案がありましたが、計画変更でオール明かり区間となりました。


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難所内にかかる天狗橋。別にどうってことない普通の橋ですが、現地では銘板破損により名前わからず。「橋」って……そんなの言われなくとも分かっとるわい!


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天狗橋を過ぎると右側に雨量観測所の施設がありました。前のスペースにはマウンテンバイク。釣り人でしょうね。清流だけあって、いい魚が釣れるんでしょうか。


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夫恋覆道を抜けてからずっと林道にしか見えない道を走ってきて、やっと道々っぽい標識が見えてきました。でも表示内容は未成っぽさを助長する一因にしかなりません。おっ?なんだか奥の開けてるぞ?


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でっかい橋キター!やっとそれらしくなって来ましたね。橋長162mの滝見橋です。雪崩を回避する為に設けられたのでかつては雪崩橋とも呼ばれていました。銘板によると1993(平成5)年11月に竣工したようです。


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しばらくぶりにプルプル立体視やってみました。あんまり立体的に見えない上に見てたら酔った。


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滝見橋の山側には旧橋が見えます。雪崩以外にもいろんな脅威に襲われ、弁慶よろしく立ったまま絶命した感じ。


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逆に川を挟んで対岸には滝が拝め、これが橋名の由来となっているんですが見るの忘れてました。そのかわり遠くの河原に釣り人発見。さっきのMTBの方でしょうか。


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滝見橋を渡り終えると青看やら矢羽やらが林立し道々っぽくなりました。当静内中札内線の路線番号は111号なのですが、青看に書かれた番号は991。1994(平成6)年に991から111に改番したそうなので、青看はそれ以前からここに立っているんですね。


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道々っぽいと興奮したのに、カーブを曲がれば林道へ逆戻り。カーブの先には雪でひしゃげたと思しきゲート。なぜゲートが?


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この札内川の道路は建設の担当者によって、地図のように3の区間に分けることができます。これにゲートの位置を落としてみると?区間の境目とゲートの位置がぴったり一致。ゲートは担当区間の区切りのようですね。


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ゲート通過後の開発局担当区間には小粒なたくさんの橋と覆道が続く計画でした。橋長はすべて30m前後、覆道の延長は1が200m、2が340m。通ってみても覆道は明らかになかったし、橋の方も気づかなかったのでおそらくどれも着工していないのでしょう。


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本日2つ目雨量観測所。おっと担当区間の区切りでもないのに、ここで、突如、まさかの、予想だにしない、意表ををつくゲートが出ましたよ。さっき画像を使ってまでした予想は一体何だったんだ?何かの区切りと考えると、工区の区切りでしょうかね。3つある開発局担当の工区はこの辺りで第3工区から第2工区に移るらしいので。


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第2工区に入ると大きな砂防ダムが作った広い河原に出ました。ここまでの道路はこの砂防ダムの工事用として開削されていたもので、これより先が日高横断道路で新設される区間となります。この工区に入って早速覆道と橋が予定されていたみたいですが、どちらも未着工。覆道にいたっては全然情報が無いのでまさかの中止か?


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上流方向を見るとすぐそこで七の沢が流れ込んでいます。日高横断道路はここで本流と分かれてこの七の沢に沿って分水嶺を目指します。本流を遡ると札内岳や雪の遺書で有名な十ノ沢があります。


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七の沢に足を向けるといきなり滝見橋以来の大きい橋が出ました。橋長144mの七の沢橋(9号橋)。銘版によると1998(平成10)年12月に竣工したようです。同じく銘版によると渡っている川は七の沢ではなくピラトミ川。七の沢は別名ピラトミ川ともいうのでしょう。


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山の中にこれだけの橋があるのに誰も利用できないとはもったいない。


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橋は幅員8mもあるのですが、渡り終えればそこは林道。一般の車両は通らないといっても、はっきりダブルトラックが刻まれているということは関係車両が頻繁に来ているということでしょうか。


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七の沢橋の後には小粒な2橋が予定されていましたが、必要ないとされ後に計画から削られています。


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しかしさらに先には覆道が、しかも前後に仮設防護擁壁付きで残されていました。こういう仮設防護擁壁は道路脇の法面工事とかの際に、道路への落石とかを食い止める城壁です。小樽の国道5号とかに仮設の域を超えてる長老が居られるので、日常的にご覧の方もいらっしゃると思います。


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道幅の半分を擁壁で埋めてしまっているのも仮設であることの証。


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延長が50mもないような覆道も中ほどまで来ると次の覆道が見えてきました。両覆道に挟まれた道路はやはり半分が擁壁で占領されています。


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人柱となり無人の道路を守り続ける哀れなハチ公。山側から相当な圧力を受け道路側に傾いてもなお工事を待っています。


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二つ目の覆道は先程よりスケールアップ。しかし延長は100mに届かず。


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二つの覆道は短く、間の明かりが微妙な長さ。全く僕の妄想に過ぎないのですが二つの覆道を接続して一つにする予定ではなかったのかと思います。


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覆道後は橋長75mの眺望橋(6号橋)。七の沢橋は9号橋で、8号7号は中止なので眺望橋のナンバリングは6号となります。銘版によると2002(平成14)年12月竣工。七の沢橋からここまで約700mの建設に4年もかかっているらしいことがわかります。


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眺望橋の眺望はというと、行く手に何やら乙りきなオーラを醸すトラスあり。


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この橋は兎影橋(5号橋)、橋長102m。いずれは盛土されるんでしょうが、地面から床版まで5mはあるでしょうか。どこぞやの鉄道には渡らずの橋なんてものがありますが、これでは渡ずの橋ですね。


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床版まで5mとは書いてみたけど、翌々見れば床版はまだありませんでした。とことん渡れません。他に工事用道路も見当たらないのでこの先に行くには渡渉が必要となりますが、濡れたくないので止めておきます。


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2014-07-18追記 上の地図、少なくとも景函橋の位置は間違えてると判明してます。たぶん他も信用できません。兎影橋に続く美函橋は必要無いとして中止。深渓橋は地形上橋以外にせざるを得ないということでこれまた中止。今日の中で最も長い175mの景函橋を渡り、60mという短い覆道をくぐり、260mの七の沢トンネルを抜け、最後に41mの源泉橋を越えたら……


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夢の静中トンネル。少し前の資料だと延長4475mですので、道内ではえりも黄金トンネルに次ぐ長大トンネルということになります。いつの間に計画変更したのか今ググってみるとどこのサイトも4,700m以上の数を書いています。日高地方とと十勝地方を分ける北海道の背骨、標高2,000mに迫るコイカクシュサツナイ岳からカムイエクウチカウシ山の山嶺に直交し、日高横断道路の要になるはずのトンネルでした。Googleマップの空中写真ではトンネル工事がされているようには見えないので中札内側は未着工っぽいです。


その帰り。
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釣り人増えてる!ゲートから歩いて来れる距離なのに、ナンバー付いてないってことはわざわざ車に積んできたのか。これが手の込んだ手抜きってやつですね。

この記事の情報

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主要地点の地図

参考文献

  • 新中札内村村史編纂委員会(編)、『新中札内村史』、中札内村。、1998年
  • 吉田勇治(著)、『日高横断(静・中線)の凍結(中止)の課題と対策(十勝側)』、吉田勇治、2003年

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コメント

  • アバター
    澤田
    2016-11-06T22:08+09:00(JST)

    道道111号線で、自電車でしたら、中札内から静内まで行くことはできるのですか?

  • アバター
    Morigen(管理人)
    2016-11-06T22:38+09:00(JST)

    いえ無理です。
    中札内側は記事の通り兎影橋で建設が今も止まったままで、静内へは通り抜けられません。
    肝心要の日高山脈を貫くトンネルが未着工ですので、無理に通り抜けるならば沢歩きor藪漕ぎをして標高1,500mの尾根を越えることになります。
    それから、現在は今年北海道で猛威を振るった台風10号の被害のせいで、大分手前で通行止めとなり自転車どころか徒歩でも入ることが出来なくなっています(たまに開発局の見回りがあるのでこっそり行くのも控えたほうが吉)。
    もし自転車で中札内から静内まで行くのでしたら、大分遠回りになりますが野塚峠が良いのではないですかねえ。